三同教50年の歩み
三同教は、市内最大の民間教育団体です。学校教育、社会教育、企業等の各分野からさまざまな団体が加わり、人権について考え合い、取組を進める組織です。そういう意味では、多くの市民の民意を代表している団体といえます。
これまで三木市が制定・施行してきた人権に関する多くの宣言や条例は、市議会をはじめ、市民や行政の意思と切り離して語ることはできません。人権に関する条例や制度等を成立させるためには、さまざまな手順や手続きを必要としますが、その根底にはおおかたの民意の結集が必要となります。
過去半世紀間の長きにわたる三同教の活動の歴史を振り返るとき、こうした市民の総意としての民意の形成に、三同教がいかに大きな力を発揮してきたかを改めて知ることができます。
(1) 三同教のこれまでの歩みを振り返って
① 三木市同和教育協議会
三木市では1964(S39)年度より三木・別所・志染・口吉川・細川の各地区で社会教育の場で同和教育に取り組むために各地区同和教育懇談会が始まりました。
1968(S43)年5月29日に先述した5地区の同和教育懇談会が歩調を合わせるために市内の関係団体代表者や学識経験者などにより三同協が結成されました。
三同協の活動のねらいは、
・地区別同和教育研修会の開催
・研究資料「同和教育のしおり」の刊行
・兵庫県及び東播磨管内研修会への参加
・学校における同和教育への助言
・関係団体に対する連絡調整
などでした。
組織は、正副会長のもと、理事として区長協議会をはじめ、連合青年団、連合婦人会、連合PTA、子ども会育成連合会、市議会、社会福祉協議会、県同和指導員などが加入していました。特筆すべきことは、発足の翌年1969(S44)年8月29日に第16回兵庫県同和教育研究大会東播大会を三樹小学校で開催したことです。
また、1971 (S46)年には、地区同和教育懇談会の名称を変更し地区同和教育推進協議会(以下「地推協」という)が結成されました。
1976(S51)年1月24日には、三木市と三同協が主催し、全国同和教育研究協議会の西口敏夫会長(当時)を迎え、「差別を許さない市民宣言」制定大会を開催しました。また、同年3月には「三木の同和教育白書」も発刊されました。この後、「差別を許さない市民宣言制定記念大会」は、人権作文の朗読や実践発表、講演といった内容で、1982 (S57)年2月まで6回にわたり開催され、1983(S58)年2月からは名称を「三木市同和教育研究大会」に変更し開催されました。
同和教育に対する意識が高まる中、しだいに各地推協の活動が活発になってきました。しかし、三同協が審議機関であったため十分に事業が推進できないとの反省から、1983(S58)年に規約を全面的に改正し、略称も「三同教」としました。学校教育、進路保障、社会教育、白書広報、企業、地推協の6つの部会を設置し、それぞれの部会規程に従い、事業を推進しました。これらの部会は、現在の三同教の専門部会の原型といえます。
また、1986(S61)年2月8日に細川町公民館で記念講演(兵庫県同和教育研究協議会事務局長)と4分科会(健康・障害児教育、進路保障、教育内容、教育活動)と1特別講座(同和教育基本講座)を内容とする学校教育部門研究大会を開催しました。そして、同じく2月15日には市立福祉会館(現在の市立市民活動センター)で講演(西脇市教育委員会同和教育指導室長)と3分科会(社会教育部会、企業部会、地推協部会)を内容とする社会教育部門研究大会を開催しました。
この2つの研究大会を経て、同年11月22日には学校教育部門と社会教育部門を統合し、市立福祉会館と中央公民館を会場にして昭和61年度第2回研究大会が開催されました。
内容は、分科会のみで、学校教育部門は就学前教育をはじめ3分科会4分散会で、社会教育部門は婦人・青年・高齢者の分科会をはじめ5分科会でした。また、この研究大会の基調提案では、三同教は市民による自主的な団体として、市民総ぐるみで部落差別の解消をめざし取組を進めてきたことを確認し、学校教育並びに社会教育分野での研究討議を進める上での重要事項について提起をしています。
今日の三同教の姿をみると、上述した1983(S58)年から1986(S61)年にかけての改革がそのベースになっているといえます。また、1999(H11)年には、同和教育を人権教育として発展的に再構築するという考え方の広がりを受けて三同教組織検討委員会を設置し、2001(H13)年には活動方針や研究大会、各分科会の研究テーマ、研究討議の柱などを人権教育の視点から見直しを図りました。また、あわせて現在の名称「三木市人権・同和教育協議会」への変更も行いました。
② 吉川町同和教育推進協議会
吉川町同和教育推進協議会(略称「町同教」)は、吉川中学校の教師集団の情熱と地道な努力が契機となって誕生しました。まず、1967(S42)年6月22日に「小中学校同和教育推進協議会」が設置され、吉川中学校では兵庫県教育委員会発行の同和読本中学生用「信愛」の活用について連日連夜討議を重ねられました。そして、同和教育を進めていくためには地域・自治会の理解が必要との考えのもと、吉川中学校は懇談会(地区別同和教育集会)を10月に実施し理解を求めました。この取組が端緒となり吉川町での同和教育の幕を開くこととなりました。そして、翌年の1968(S43)年5月20日に町同教が発足しました。しかし、運営は住民主体の活動ではなく、行政主導で進められました。
その後、1971(S46)年には、同和教育啓発紙「地上」が創刊され、町内全戸に配布されました。編集は、教師を中心とした編集委員が担当し、「・・・地上にあるものすべて、一つとして同じものはない。一本の草、一輪の花、どの一つにも、そのものにしかない生命の美しさをもっています。まして・・・天与の恵みに生きる人の生命(いのち)を、人為によって傷つけあうことのないように、・・・」との念願をこめて創刊され、1978(S53)年3月まで発刊されました。
1973(S48)年より「部落(地区)別同和教育懇談会」が38地区で実施され、翌1974(S49)年3月26日には吉川町議会により「差別を許さない明るい町づくり宣言」が議決されました。さらに1978(S53)年には部落(地区)別同和教育懇談会をまとめ、「町ぐるみ同和教育啓発大会」(現在の「あったかいっていいな大会」)が開催され、1980(S55)年には、会長に行政職員以外の人が就任するようになりました。また、住民や地区が学習内容や学習方法を地域の実情に合ったものに選択できるようにと、「メニュー方式」をとることにし、住民主体の取組へと方向を変えてきました。1982(S57)年には、人権学習も含めた社会教育に取り組む地区を3年間指定し部落社会教育推進地区指定事業を開始しました。
その後、1996(H8)年から三木市との合併まで(2005(H17)年)の間は、住民参画を基調にした取組が精力的にすすめられました。1997(H9)年からは、「あったかいって、ここちよい」をキャッチフレーズとして、個人の体験から気づきと自分づくりを自らの手で行う取組が進められてきました。これを受け、「ふるさと講演会」を「あっかいってここちよい祭」に、翌年には人権教育啓発大会の名称を「あったかいっていいな大会」に変更し、住民参加、参画のさまざまな事業がすすめられました。
③ 三同教
その後、2006(H18)年の三同教と吉川町同教との統一を経て、2014(H26)年8月19日に新たに三同教組織・運営検討委員会を設置しました。6回にわたる検討会を開催し、翌2015(H27)年2月には、提言として「検討の方向性を踏まえた具体的取組(案)」を示しました。この中では、これまでの取組を踏まえ、「市民に開かれた三同教」と「市民とともに創りあげる三同教」をめざし、「市民参画」「体験」「創造」「交流」をキーワードとして取組を進めることとしました。そして、検討の方向性(課題)を、①組織づくり、②事務局体制の整備、③研究大会のもち方、④広報活動、⑤人権文化の創造・発信、とし、さらに具体的な取組を掲げました。
たとえば、「組織づくり」では、三同教規約の改正や人権にかかわる当事者団体等の加入促進、(仮称)「3サポーターズ制度」(現在の「スリーサポーターズ登録制度」)の創設などです。
同時期の特筆すべき取組は、2014(H26)年11月15日に開催した第30回記念三木市人権・同和教育研究大会があります。30回という節目にちなみ、「30年の軌跡をふみしめ、新たな歩みを」を大会テーマとし、例年の日程を変更し「三同教46年のあゆみと今後に期待するもの」と題して記念講演を組み入れ、三同教として自らの実践を振り返る機会としました。
ここ数年、三同教の取組は、事務局体制や組織、事業などに大きな変化がみられます。規約改正は、2015(H27)年4月28日の総会で可決されました。主な変更点は、目的を「基本的人権の尊重、自由と平等を基調とする」とし、新たな組織として「企画・運営委員会」を設置し、組織・運営にかかる懸案事項や取組事業等の企画・運営について協議する、とした点です。
さらには、企画・運営委員会は、三同教の今後のあり方や人権に関する市民意識調査の方法等についての検討や三同教発足50周年記念事業の企画・運営等について、三同教全体の大きな推進力となっています。
また、2013(H25)年から三同教事務局に専門職員が配置され、三木市からの事業も委託から補助に切りかえられました。さらに翌年には1名増員され、事務局体制が充実してきました。事業もじんけんサポート事業をはじめ、FMみっきぃ啓発番組、じんけんスタディ事業、じんけんリーフレット作成事業、じんけんフィールドワーク事業、人権ふれあい交流事業、青少年教育補助事業など、順次拡充していきました。
以上の事業のほか、2015(H27)年の三同教研究大会からは特別分科会の開催や主に親子や障がいのある人などにも参加してもらえるよう、バリアフリー映画の上映なども行ってきました。また、市民の皆さんが三同教事業の企画や運営に携われるよう、「スリーサポーターズ登録制度」を設け、特に「ジャンプの会」のメンバーは事業の企画や啓発・運営などの具体的な取組も担い、大きな成果を得ています。
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未来に向けて
三同教は、2014(H26)年8月に三同教組織・運営検討委員会を設置し、「三同教の今後のあり方についての方向性を踏まえた具体的取組(案)」や第30回研究大会記念事業等について、6回にわたり検討を重ねてきました。そして、2015(H27)年度の定期総会で規約改正を行い、目的を「三木市における人権・同和教育の推進を図ること」から「基本的人権の尊重、自由と平等を基調とし、同和問題をはじめあらゆる人権問題の解決をめざし、三木市民自らが市と協働し人権尊重のまちづくりをすすめること」としました。そして、この目的を達成するために組織や運営、活動等のあり方を検討するために委員会を設置し取組をすすめてきました。
この総会での決議を受けて同年7月には三同教企画・運営委員会を設置しました。1年目には、三同教の組織・運営のあり方の他、スリーサポーターズ登録制度や研究大会のもち方等の検討を4回にわたり行いました。また、その翌年の2016(H28)年には市の「人権尊重のまちづくりに向けた意識実態調査」(「三木市人権に関する市民意識調査」)の設問項目等の検討や三同教50周年記念事業の実施に向けての協議を中心に、2017(H29)年6月までに12回の会議を開催しました。そして、その後は三同教50周年記念事業企画委員会へと引き継がれました。
上述した委員会で出されたさまざまな課題は、いずれも今後三同教自身が改善し解決していかなければならないものばかりです。また、先の市民意識調査結果等をみても人権意識や人権に対する考え方等にも課題が見られます。
折しも2016(H28)年には「障害者差別解消法」や「ヘイトスピーチ解消法」、「部落差別解消推進法」の3つの法律が施行されました。こうした状況の中、過去半世紀にわたる取組を踏まえ、課題を明らかにし未来に向けて人権教育・啓発のあり方をさらに充実したものとするため、三同教として「未来志向の人権」並びにそのモデルを示す必要性があると考えました。
(1) 三同教が考える「未来志向の人権」とは
「未来志向の人権」とは、未来に向けての人権教育・啓発のあり方です。三同教は、これまでの長い取組の中でつねに三木市とともに人権を尊重したまちづくりをすすめてきたという経緯を踏まえ、今後もこのスタンスを取りつつ、その実現をめざしたデザインを描いていくという考えに立ち、「未来志向の人権」について考えていきます。
この考え方は、最終的には市民一人ひとりをはじめとして、家庭や地域、学校、企業、三同教組織などでの各層、各場面での人権のあり方についてのモデルを具体的に示すことになります。
ここでは、その前提として「未来志向の人権」がめざすもの(目標)を示します。
「人権」とは、生まれながらにしてすべての人に平等に与えられている人としての権利や自由です。これを三同教としてまちづくりや市民生活の観点も踏まえ、「Openひらく」と「Withともに」というキーワードでまとめました。
一人ひとりの人権を尊重しながら、人とのかかわりを通して誰もが大切にされ、ともに豊かなまちづくりをすすめるために互いが心を開き、人とつながることが必要です。
さらに、そのうえで一人ひとりの違いや多様性を認めながら、力を合わせ共に人権が尊重されるまちづくりをめざしていくことが重要であり、人とつながることが必要となってきます。
こうした観点から三同教は「未来志向の人権」をめざします。以下に、その内容を示します。
- 人格・個性の尊重・・・一人ひとりがかけがえのない存在として大切にされること
- 相互尊重の人間関係づくり・・・だれをも排除せず、人と人とが温かく交わり心通わせ、互いに協力し支え合う関係を築くこと
- 地域社会への主体的関与・・・地域社会をよりよくしていくために、一人ひとりがみんなとともに話し合ったり活動したりする働きかけをしていくこと
- 人権文化の創造・・・互いの違いを認め合い、ともに生きていくことが市民文化を豊かなものにしていくこと
(2) 「未来志向の人権」モデル構想のために
三同教は、先述の「未来志向の人権」をめざすために「Openひらく」と「Withともに」というキーワードを示し、人権を核としたまちづくりや市民生活をすすめていきます。
これらのことを具体的な場でどう取り組んでいくかを以下に示します。
① 三同教組織として
2014(H26)年度に三同教の今後の組織・運営のあり方を検討するため、「三同教組織・運営検討委員会」を立ち上げ、6回にわたる協議を重ね、 提言「検討の方向性を踏まえた具体的取組」をまとめました。
この提言では、三同教のこれまでの取組と現在の状況を踏まえ、「市民に開かれた三同教」、「市民とともに創りあげる三同教」という方向性のもと、「未来志向の人権」をめざすための具体的な取組となっています。以下に提言の概要を紹介します。
ア 組織づくり
(ア) より多くの市民に三同教の存在を知ってもらい、親しみをもってかかわってもらえるよう三同教規約を改正する。
(イ) 人権にかかわる当事者団体等に対して加入を促進する。
(ウ) 「3サポーターズ制度」(仮称)を創設する。
イ 事務局体制の整備
市民に開かれた三同教、市民とともに創りあげる三同教をめざし、事業などの企画・運営を行うために新たに「三同教企画・運営委員会」を設置する。
ウ 研究大会のもち方
研究大会での討議内容や成果・課題などを次年度にしっかりと引き継ぐことや参加した分科会以外の分科会の討議内容等について共通理解を図るために、研究大会後に総括会議を開催する。
エ 広報活動
(ア) 三同教の名称や活動内容をより多くの市民に広く知ってもらうため、独自のホームページを作成し、積極的に広報を行う。
(イ) FMみっきぃの「人権の小窓」に加え、人権に造詣の深い方に人権の観点から解説などを行ってもらう。
(ウ) 市民に親しみを持ってもらえるようにロゴマークを作成し、さまざまなグッズに付け、啓発活動を行う。
オ 人権文化の創造・発信
音楽や書、演劇、映画などを通じて感性に訴え、差別や不条理などを許さない人権文化を生み出す契機とする。
上述した三同教組織・運営検討委員会を経て、企画・運営委員会、さらには50周年記念事業企画委員会では、三同教組織を市民に広く開き、豊かな視点や発想、経験などをもつ多様な人たちの結集のもと、人権教育・啓発にかかる事業をすすめていきます。そのためのキーワードを「Openひらく」と「Withともに」としました。
そして、このキーワードを実現していくための方向性や視点を以下の4点としました。
(ア) 市民参画
三同教が実施するイベントや研修会などに、より多くの市民が気軽に参加し、楽しくかかわりをもったり、それらの企画や運営にやりがいをもって携わったりすること。
(イ) 交流
三同教が実施するイベントや研修会などの事業の中で参加者同士が出会いやふれあい、話し合いなどを通して心豊かな交流を図ること。
(ウ) 体験
人権について知識として理解するだけでなく、さまざまな体験を通して体感的に理解すること。
(エ) 創造
市民の目線に立ち、イベントや研修会などの事業内容や手法などをさまざまなアイディアやノウハウなどを駆使し、市民にとって魅力的な事業を創りあげること。
② すべての市民にとって
今後、市民が主体的、積極的に人権教育・啓発にかかわっていく際のイメージとして、以下に5つの「市民像」を提案します。
ア 「参加し、参画する市民」
三同教や行政・学校園所などが実施する研修会やイベントなどに気軽に参加できるとともに、自分にできる範囲で運営に協力したり、自分の発想を生かして企画にかかわったりしていける市民になっていく。
イ 「出会い、対話する市民」
参加した研修会やイベントの中で、あるいは参加後の日々の生活の場において、市民同士が出会いと絆を大切にし、お互いの立場や経験を尊重しながら対話し、互いに「元気になり」「自信をもって生きる」ことができる市民になっていく。
ウ 「気づき、学び合う市民」
身近な生活の中にある具体的な「人権」に気づき、その気づきを他者と交流し合い、ともに「自他の生活」を高めていける「学び合い」のできる市民になっていく。
エ 「人と自分を同時に大切にする市民」
「自分や家族だけがよければよい」という考えでなく、「人も自分も同時に大切にし、ともに幸せになっていく」という考えをもてるとともに、日々の生活の中でこうした考えを実行できる市民になっていく。
オ 「自分・家庭づくりから地域づくりに向かう市民」
人権・同和教育からの学びを「自分づくり(自己実現)と家庭づくり」に生かしていくとともに、みんなが笑顔で生活していける「地域づくり・職場づくり」に努力していける市民になっていく。
③ 人権研修・学習会で豊かに学ぶために
生涯学習とは、学齢期だけでなく社会人になっても、一生涯いつでも、どこでも、だれでもが自由に学ぶことができ、人生をより豊かにしてくれる重要な営みです。私たちは、生涯学習によって社会の変化に的確に対応したり、多様なものの見方や知識などを得たりすることで、自らの人生をよりよく創っていくことができます。
この「学び」には、趣味や関心のあることなど「自ら学びたいこと(要求課題)」とあわせて、人として「学ぶべきこと(必要課題)」があります。「ぜひ学ぶべきこと」は、生きていく上で誰もが考えなければならない、いわば避けて通れないことです。環境問題や情報化、国際化、平和、人権などがそれです。これらの学びは、自分とともに他者を大切にしながら、よりよい社会を創っていくという観点から「必要課題」と言われ、とくに人権の課題については、他者との共存を図るうえで極めて重要なこととして位置づけられています。
しかし、三木市では人権研修や住民学習会などに積極的に参加する市民が減少する傾向にあります。これにはさまざまな要因が考えられます。市民に要因がある場合もありますが、人権研修や学習会を企画・運営する側にも課題があります。
そのことは、たとえば1998(H10)年に出された兵庫県教育委員会の「人権教育基本方針」の中には、「教育指導や学習の環境が、学習者の人権を尊重したものとなるよう、その充実に努める」旨がうたわれています。こうした観点から人権研修・学習会の企画・運営のあり方を点検する必要があります。
ここでは、参加者が「楽しく学べ、また行きたい」(リピーターとなる)と思える会にするため、以下の視点で企画・運営を行うことを提案します。
ア ねらいを明確に
イベントや学習会などを企画する際には、参加者がどんなことを学びたいと思っているのかなどをもとにして、会のねらいを世話役が共通してもつことが必要です。また、そのうえで中・長期的に地域や組織をどういう方向に進めていきたいのかについて、世話役だけでなく参加者と共に考えていくことが大切です。
イ 楽しく学ぶための工夫づくり
イベントや学習会などを「ともに学ぶ」というスタンスでとらえると、いわゆる「教える人」と「学ぶ人」は、融合されてきます。相互補完的で、共に企画し創造していく関係になれば、「学び」に一体感が生まれます。「他人事」から「自分事」へと関係が転換されます。いわゆる「参加から参画へ」です。
しかし、すべての参加者に一度にこうしたことを望むのは無理があります。気軽に声を掛けられる人から始めていき、徐々にその輪をひろげていきます。たとえば、パソコンの得意な人に案内チラシや当日の資料を作ってもらうとか、生け花が得意な人に会場に花を活けてもらうとか、習字の得意な人に当日の演題などを書いてもらうなど、無理をしないでその人の持っている特技などを気軽に生かすことが大切です。そして、何よりもこのことを当日の会で参加者にしっかりと伝えることです。そのことで、手伝ってもらった人たちへの感謝の気持ちとさらに多くの人の協力を得る契機となっていきます。また、何よりもその人の自尊感情を高めることにもつながっていきます。こうした積み重ねなどにより、「ちょっと行ってみようか」「敷居が低くなった」という意識が芽生えてくるのではないでしょうか。
ウ 学習者の人権を尊重した場づくり
さらに、重要なことは参加者が何よりも自分が大切にされていると実感できるような学習の場が保障されているのかどうかが極めて重要です。「せっかく来たのに、一言もしゃべらずに帰った」、「雰囲気が重たくて居るのが嫌だった」などとマイナスの印象ばかりが残るようでは学習効果は半減します。
まずは、自由に話せる雰囲気づくりです。さらに、資料や内容が分かりやすいことなども大切です。ただ話を聞いただけ、ビデオを観ただけでは、せっかくの学びの効果が薄れます。学習者同士が学び合える場づくりこそ大切にされる必要があります。ある自治会では、「久しぶりに〇〇さんと話ができて、楽しかった」という素朴な気持ちを大切にすることを学習会の出発点としています。「出会いと語らい」を重視することが何よりも大切にされる場が求められているのではないでしょうか。
さらに、学習後に家庭などで話ができるような資料を用意することで、学習の輪を広めることにもなります。この他、さまざまに工夫することで、リピーター(「また、行きたい」という気持ち)を増やすことにつながっていきます。
(3) 「未来志向の人権」モデル
「未来志向の人権」のモデルとなると考えられる、現在活動中の取組事例を以下に紹介します。
① 地推協
「地推協」は、正式には「○○地区人権(・同和)教育推進協議会」といいます。地推協は、住民学習の推進や研究大会の開催などにより、部落差別の解消をはじめ、さまざまな人権課題の解決のために、地区住民の人権意識の高揚に取り組んできました。
近年、住民学習のマンネリ化や参加者の減少、とりわけ若年層の参加が少ないことなどの課題が顕在化しています。
そこで、三同教発足50周年以降を見据え、今後モデルとしたい取組を以下に紹介します。
ア 新しい部落史「士農工商はなかった」の活用(吉川地推協)
部落差別の起源についての実証的な歴史研究が進み、そこで明らかになったことについて学習していく必要があります。従来の同和学習では、被差別部落の成立が江戸幕府の政策によるものだとされ、いわゆる「士農工商」の身分制度のもとで、被差別部落の人々が悲惨な生活を強いられたことがいたずらに強調されてきました。しかし、新しい部落史では、そもそも江戸時代には「士農工商」という身分はなく、部落差別の起源が中世からの「けがれ」観にもとづく差別意識に起因することが定説になってきています。中世より存在していた社会的・世俗的な「けがれ」差別意識を利用して江戸幕府や各藩が「えた」や「ひにん」などの身分を置き、政治的・制度的に固定化する部落差別は、排除・疎外の歴史であったのです。また、明治時代以降において「経済・教育・環境等の格差」が生じた部落差別の実態を学習することも大切です。この学習は、障がい者・女性・外国人・高齢者などの人権課題の解決にも通じるものがあり、今の私たちの生活の中にあるあらゆる差別を解消することにつながるものです。
これらのことをわかりやすくまとめた冊子「新しい部落史『士農工商はなかった』」を活用し、吉川地推協では住民学習会などで学習しています。
イ 人権フィールドワーク(自由が丘地推協)
自由が丘地推協では、2014(H26)年までは、人権にかかる各地の資料館などの見学を実施していましたが、より印象に残り深みのある研修となるよう、フィールドワークを取り入れました。参加人数は限られるものの、この研修スタイルは、人権推進の輪を広げるのに期待がもてると考えました。以下は、その実績です。
2015(H27)年 大阪府堺市(舳松人権歴史館およびその周辺)
2016(H28)年 神戸市長田区(長田区役所周辺ほか)
2017(H29)年 神戸市中央区(賀川記念館ほか)
長田区へフィールドワークに行くことになったきっかけは、住民学習の際に参加者から偏見にもとづく発言があったことでした。
区内にある対象地域は、造船業への影響を回避するための流れを変えた新湊川により、何度も水害に見舞われました。また、阪神・淡路大震災でも大きな被害を受けました。フィールドワークは、そんな歴史的な背景や現在の様子を実感できるよい学習の機会であり、参加者からも高く評価されました。
ウ 観光地を人権の視点でめぐる(細川地推協)
龍安寺石庭・全国水平社創立大会の地(京都市岡崎公園)・銀閣寺
古都京都には、多くの名刹、名園、史跡などの名勝地があります。そこには京都の歴史と文化の創造・発展に寄与した被差別部落の人々の歴史があります。それらをボランティア人権ガイドの丁寧な導きと説明で、人権の歴史という視点でめぐることができました。
三同教のうた
三同教のうた(あなたがいるからあったかい)の歌詞はこちら
第1章 名称及び事務局
第1条 本会は、三木市人権・同和教育協議会(略称 三同教)と称し、事務局を三木市立総合隣保館内に置く。
第2章 目的及び事業
(目 的)
第2条 本会は、基本的人権の尊重、自由と平等を基調とし、同和問題をはじめあらゆる人権問題の解決をめざし、三木市民自らが市と協働し人権尊重のまちづくりをすすめることを目的とする。
(事 業)
第3条 本会は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1) 研究大会、研修会、講演会その他の人権・同和教育及び啓発。
(2) 調査研究並びに資料の収集、作成及び配布。
(3) 関係諸機関団体との連絡調整。
(4) その他、目的達成に必要な事業。
第3章 組 織
第4条 本会は、第2条の目的に賛同する各地区の人権・同和教育推進協議会又は人権教育推進団体並びに企業その他の団体及び関係機関をもって組織する。
第4章 役 員
(種類及び任務)
第5条 本会に、次の役員を置き、それぞれの任務を行う。
(1) 会 長 1名 本会を代表し会務を統括する。
(2) 副会長 4名 会長を補佐し、会長に事故あるときはこれに代わる。
(3) 理 事 10名程度 本会の業務をつかさどる。
(4) 会 計 1名 本会の経理にあたる。
(5) 監 査 2名 本会の経理を監査する。
(選 出)
第6条 会長、副会長、会計及び監査は、役員会で推薦し、総会において承認を得る。
2 理事は、各専門部会・委員会及び関係行政機関から選出する。
(任 期)
第7条 役員の任期は1年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の役員の任期は前任者の残任期間とする。
(顧問及び参与)
第8条 本会に、顧問及び参与を置くことができる。
第5章 会 議
(種 類)
第9条 本会の会議は、総会、役員会、企画・運営委員会及び専門部会・委員会とする。
(招 集)
第10条 会議は、事前に協議題を示して各会の代表が招集する。ただし、会議の招集ができない事由がある場合は、書面等による開催に代えることができる。
(定員数)
第11条 会議は、構成員の過半数の出席がなければ開会することができない。ただし、委任状をもって出席に代えることができる。
(議 決)
第12条 会議の議事は、出席者の過半数で決し、可否同数のときは議長、または各会の代表の決するところによる。ただし、会議の招集ができない事由がある場合は、書面等により議事の決定を求めることができる。
第6章 総 会
第13条 総会は、毎年定期に開催する。ただし、会長が必要と認めた場合は、臨時に総会を開くことができる。
(附議すべき事項)
第14条 総会に附議すべき事項は、次のとおりとする。
(1) 規約の改正に関すること。
(2) 事業計画及び報告に関すること。
(3) 予算及び決算に関すること。
(4) 会長、副会長、会計、及び監査の選出に関すること。
(5) その他、必要なこと。
第7章 役 員 会
(構 成)
第15条 役員会は、第5条に掲げる者で構成する。
(附議すべき事項)
第16条 役員会に附議すべき事項は、次のとおりとする。
(1) 本会の運営に関する企画及び事業計画の立案に関すること。
(2) 総会で委任された事項に関すること。
(3) 企画・運営委員会及び各専門部会・委員会から付託された事項に関すること。
(4) 兵人教及び東人教の役員等の選出に関すること。
(5) 各構成団体の連絡調整に関すること。
(6) その他、必要なこと。
第8章 企 画 ・ 運 営 委 員 会
(構 成)
第17条 企画・運営委員会は、役員会で選出した者で構成する。
(協議すべき事項)
第18条 企画・運営委員会で協議すべき事項は、次のとおりとする。
(1) 組織・運営にかかる懸案事項に関すること。
(2) 取組事業等の企画・運営に関すること。
(3) その他、必要なこと。
第9章 専 門 部 会 ・ 委 員 会
第19条 本会は、学校教育部会、進路保障部会、社会教育部会、企業部会、地区人権・同和教育推進協議会(地推協)部会及び白書広報委員会を置くことができる。
2 部会長(委員長)及び副部会長(副委員長)の内2名は、理事を兼ねる。ただし、役員会の承認を得れば、この限りではない。
第10章 事 務 局
第20条 本会に、事務局を置く。
2 事務局は、本会の事務を処理し、会長が委嘱する次の職員をもって構成する。
(1) 事務局長 1名
(2) 書 記 若干名
(3) 会計係 1名
第11章 経 理
(経 費)
第21条 本会の経費は、補助金、寄付その他の収入をもって充てる。
(会計年度)
第22条 会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる。
第12章 そ の 他
(規約の改正)
第23条 この規約は、総会において出席者の3分の2以上の賛成により改正することができる。
附 則
1 この規約は、昭和51年6月 1日から施行する。
2 この規約は、昭和58年7月28日から施行する。
3 この規約は、昭和60年5月25日から施行する。
4 この規約は、昭和62年5月23日から施行する。
5 この規約は、昭和63年5月21日から施行する。
6 この規約は、平成10年5月16日から施行する。
7 この規約は、平成13年5月19日から施行する。
8 この規約は、平成17年5月21日から施行する。
9 この規約は、平成18年5月20日から施行する。
10 この規約は、平成21年5月16日から施行する。
11 この規約は、平成27年5月16日から施行する。
12 この規約は、令和3(2021)年5月15日から施行する。